キャッシュバック
いきおいよく立った、 震える子どもの足どり。 赤信号が逆撫でる僕の自制心。 しめったアスファルトは覚えているか。 父に向き合えなかった僕に誇れるのは、 なぐさめてくれる小さなぬくもりだけ。 あの日、黒い服を着ていけばよかった。 そうすれば何か変わったのだろうか。 カードを差し出す愛らしい指。 罅われたプラスチックからは、もう何も引き出せない。
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